放課後等デイサービス「ツクル」は、 ITに特化した療育で子ども達のITスキル、ソーシャルスキルを支援します。

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療育コラム 卒業〜需要供給のトラブルを回避する 〜昭和の名曲から考える『胸のボタンの原理』

2019年3月9日

♪ 制服の胸のボタンを 下級生達にねだられ 頭かきながら逃げるのね 本当は嬉しいくせして
♪ 人気無い午後の教室で 机にイニシャル彫るあなた やめて想い出を刻むのは 心だけにしてとつぶやいた

有名な斉藤由貴さんの『卒業』ですね。
昭和を代表する名曲です。

しかしよく見るとコレが凄い歌詞なんです。

『制服の胸のボタンを 下級生達にねだられ』
→これって他人のモノを奪おうと追いかけ回していますよね?でも・・・

『頭かきながら逃げるのね 本当は嬉しいくせして』
→追いかけられてる人って、嬉しそうに逃げてます?!

うーん。なんか複雑。
逃げるぐらいならボタンをあげればいいのに。
でもこれってあれか・・・。物品の略奪行為として後々ややこしくなるのではないかと心配もしてみる。

『人気無い午後の教室で 机にイニシャル彫るあなた』
→あ〜〜〜っ!ダメダメ!これは器物損壊ですよ!大問題です!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

とまぁ時代もあるのでしょうか、とにかく昭和の曲って今見ると凄いですね。
しかしこれをもう少し違う目で見てみると、状況が変わってきます。そう、特にこの『ボタン』のくだり・・・

昭和の時代の卒業式でよく見られた『胸のボタンのやり取り』は、欲しいのは『ボタン』ではなく、その『ボタンを持っている人からの好意や興味』だと、ボタンを持つ側もボタンが欲しい側も暗黙の理解をもって行われていたので、誰も咎めることは無かったし、略奪行為として罰せられることもありませんでした。

では、もし放課後等デイサービスの療育中に、子ども達がオモチャの取り合いで走り回っていたら・・・を考えてみましょう。

①『他人のモノ(ボタン)が欲しいから追いかけ回す』行為。
そのモノが純粋に欲しいことがあります。だから追いかけます。
その場合、追われている子どもの様子はどうですか?

A.頭をかきながら嬉しそうに逃げている(×
→追いかける側の片思い状態であることが多いです。逃げる側は困惑気味であるか、または逆に追われることに快感を持っています。この関係は良好な状態でクロージングできませんので、タイミングを見て介入します。

B.嫌そうに必死に逃げている(×
→当然直ぐに介入します。双方とも全く利害関係が一致しません。このままでは必ずもめます。双方を個別に分けて聞き取りを行います。そして必ず最後にはお互い納得できるクロージングが必要となります。

②『他人のモノ(ボタン)よりも、その人に好意がある』行為。
この場合も追われている子どもの様子を観察してみましょう。

A.頭をかきながら嬉しそうに逃げている(
→問題ありません。需要と供給が取れています。追いかけて欲しい側と追いかける側の利害関係が一致していますので、安全面の配慮をしっかりしながら見守りをします。その内どちらかが飽きて諦めますので。(※ヒートアップし過ぎてもめないように時折クールダウンに介入。)

B.嫌そうに必死に逃げている(×
→これもいわゆる『片思い状態』です。やるせない状態です。後でトラブルになります。双方を個別に分けて聞き取りします。そして必ず最後にはお互い納得できるクロージングを行います。

ゆえに・・・
追いかけ合いの際、トラブルなく楽しく過ごせるケースは、②のAの場合となります。

そうです。これが『胸のボタンの原理』となります。

『胸のボタンの原理』とは、要求者の要求対象が物理的な『モノ』ではなく、心理的な好意や興味であった場合、供給者が嬉しそうに拒否しても利害関係は一致するということです。

一見単純に「オモチャの取り合い」などの行為があった場合でも、双方の心理面を見極めて対応しないといけません。
追いかける側の要求が物理的な『モノ』なのか、それともその『好意や興味』なのかを見極めることがとても大切になってきます。
仮にそれが物理的な『モノ』であった場合、そのままでは解決できません。直ちに介入しないといけませんが、もしそれが『好意や興味』であった場合、逆に暖かく見守りをしないと「なんで止めるの?!」と双方とも不穏になる可能性もあります。
しかしどういう状況であるにせよ、私達支援をさせてもらう側として、子ども達の心理的本質をしっかり見極めないと、折角の支援や指導などが逆効果になりかねません。

本当にとても難しい仕事だなと思います。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

卒業。
今のシーズンはこれ一色です。
昨日も、ある私の担当する生徒さんの高校卒業式がありました。
その様子を学校で拝見することができ、とても微笑ましく、また少し寂しくも思えました。

胸のボタンをもらうことはできませんでしたが、その子との『想い出を心に刻む』ことができました。

本当によく頑張ったね。
おめでとう。

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