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療育コラム 『そうだ!妻にチョコレートを食べさせよう!』問題行動を代替行動で対応する行動分析のススメ
春はまだですか。
まだですね。
そういえば2月はバレンタインデーですね。
寒いとアグレッシブに動くこともできず、食べてばかりで体も鈍り、ホントイライラしますよね。
体が重く、調子も悪い。
そんな時は夫や妻の一挙手一投足が気になり、ついどうでもいいことにも悪い方向で反応してしまいませんか?
ましてやこんな最中に
「今日の味噌汁塩っ辛いな」
なんで言われようものなら
「それなら自分で作りなさいよ!〇カ!」
なんで怒鳴り散らしてちゃぶ台をひっくり返したりしてしまいますよね。
えっ?そこまではしない?
あぁそうですか。すみません、さすがにうちもそこまではありません。
ではこんな時、みなさんはどうしますか?
『暖かくしてゆっくり過ごします。』
『ジムで汗をかいてマッサージチェアでリラックします。』
『おいしいものをもっとイッパイ食べてストレス解消します!』※注意:余計に太ります
色々な凌ぎ方が思い浮かびますね。
私は最近ボーリングでこのへんを凌ぎます。
年末から末っ子と一緒に通い出しました。
カーブのかけ方をYoutubeで覚え、ROUND1さんの会員にも入り、息子はマイボールを買ってもらってモチベーションを維持し、お父ちゃんは体調管理と運動不足の解消を狙っています。
さて、話を戻しましょう。
寒くて体も重くて体調も悪い。
そんな中、イライラした状況下において、奥様や旦那様から
「最近老けた?」
なんて言われようものなら・・・あれ?何か違う?
まぁ、良しとしましょう。
とにかくイライラが募ってカチンと来た場合、みなさんはどうしますかという話。
先程冗談で言いましたが、
「それなら自分で作りなさいよ!〇カ!」や「老けたって?いったい誰のために毎日身を粉にして働いていると思ってるの?!〇ホちゃう?!」
等、穏やかでない表現で暴言を吐き、それでも収まらない場合はちゃぶ台をひっくり返したり、酷い時には奥様や旦那様のオツムに”ポカっ!”ってな暴力まで振るってしまう・・・そう、これが自分の怒りを粗暴な行動で対応してしまう問題行動なわけです。
しかもこの問題行動は、人によって沸点が違います。
また、その個々にも心理的バロメータがあり、日や時間やタイミングが変われば、これまた沸点が違ってくるのです。やっかいですね。
このように複雑な心理上の様子を、他人が正確に理解できると思いますか?
少なくとも私には無理ですね。
長年連れ添った妻にでさえ、未だに「それなら自分で作りなさいよ!〇カ!」と言われてしまう始末です。あ、言われているのバレましたな。
では、この問題行動をどのように凌げばいいのでしょうか?
実は私、うちの妻にはある『魔法』を掛けています。
うちの妻は働き者です。本当によく働きます。看護師として長年勤めていますが、激務と家事もこなしているので、動かない日はありません。
その分お腹をよく空かせています。よく食べるんですよホントに。
その食欲旺盛の妻は、特に甘い物が大好きで、果物でもスイーツでもとても喜んで食べてくれます。
そう、食べさせるんです。怒り出す前に。
私は妻の日頃のイライラをなかなか察知することができない鈍感亭主ですが、妻がお腹を空かしているかどうかはわかります。
だって「お腹減った〜〜〜!」って言いますもん。そりゃ誰でもわかりますわよ。
その時、お茶菓子のカゴからササッとチョコレートとかを出してあげるんです。
「これ、おいしいよ!」って優しい言葉でも添えてやれば尚更よし。これが私の編み出した【チョコレートの魔法】。
続いて夕ご飯もその流れで作ってあげればもう完璧。
その日は満足して洗濯と洗い物をしてくれるんですよ。ウッシッシ。
どうですか?
実はこれが『代替行動』で問題を解決している一例でもあるのです。
【状況の把握】
妻がイライラする=粗暴になる
妻をイライラさせない=粗暴にならない
妻をイライラさせない=チョコレートを食べる
【ゆえに】
チョコレートを食べる=粗暴にならない
つまり妻が『粗暴にならない』ことと『チョコレートを食べる』ことが代替的な関係で交換が成立するので、先手を打ってチョコレートを食べてもらうんです。
本来、自閉症スペクトラムなどの発達障害を持った人たちが、自分の問題行動をコントロールするのはとても難しいことですし、またそれが習慣からくるものなら尚更改善は厳しいと思われます。
私達支援させてもらう側も、本人すら問題行動のトリガーが読めない状況の中で、その沸点を正確に割り出して、それを無くすことは本当に難しいことだと思います。
問題の解決は、0か100ではありません。
もちろん理想は0になることですが、いきなり0にすることを目指すよりも、その間には1〜99のグラデーションがあってもいいと思うのです。
「いつも優しい妻」になってもらうよりも「食いしん坊の妻」の過程があってもいいと思うのです。
私も多用する応用行動分析(ABA)には『スモールステップ』という概念があります。
『現状良し』のスタートから、少しずつ少しずつ、ほんの紙切れのような薄い階段を敷きながら、それらを日々積み重ね、徐々に徐々にと上へ上へ登って行き、気がつけば高い高い大きな目標に到達している、という考え方です。
またその過程をしっかり記録し、状況(Antecedent)行動(Behavior)結果(Consequence)の段階を持って分析し(ABC分析)、次なる支援や方略を導き出して行くのです。
問題行動の克服をいきなり成し得ることは難しいのですが、代替行動等によって、まずは大きな問題を回避し、時間をかけてじっくりと核心になる問題を克服していく方が、合理的に問題を解決できることが多いと私は考えます。そう、急がば回れですよ。
今回テーマとして取り上げました代替行動は、そんな支援のグラデーションの一角を担うとても大切な導き方だと考えます。
保護者であれ親であれ、また支援者として、サポートさせてもらう方々に、今までとても手に負えない問題行動をしてしまう方がおられたら、一度0に矯正することから階段を何段も降りてきて、代わりの行動を色々試してみてはどうでしょうか?
例)大きな音を出してしまう
↓
笛を吹く【チョコレートの魔法】
↓
音の小さな笛を吹く
↓
音の出ない笛を吹く
↓
笛を吹かない
↓
音を出さない
代替行動についても、少しずつレベルを設けます。
焦ってはいけません。あくまで徐々に徐々に。
失敗を恐れず、何度も分析をしながら色々やってみましょう。
答えはそう遠くにないかも知れませんよ。
ちなみに・・・大食いであまい物好きの妻は私よりもずっとスマートだったります。なんでやねん。